「向こう岸に渡ろう」マルコによる福音書4章35節~5章1節、柴田良行牧師
イエスさまは、「向こう岸へ行こう」と弟子たちにいわれて、舟でガリラヤ湖へ漕ぎ出された。次第に天候が悪くなり舟に水が入り、弟子たちは沈んでしまう恐怖の中にいるのにイエスさまは寝込んでいた。弟子たちがイエスに叫んで訴えると、イエスさまは風をしずめられた。
「向こう岸」とは、異邦人の地。つまり、汚れた民の地、安全なこちら側ではないあちら側。こちら側から遠くに眺め、知りもせず差別する弟子たちに向かって、イエスさまは軽々と向こう岸へ行こうといわれる。なぜなら、向こう岸にはイエスさまの言葉を必要とする人がいるから。イエスさまに引っ張られるようにして向こう岸にいった弟子たちは、実はここにも「神の国」があることを知った。イエスさまと一緒に向こう岸に渡るときに、私たちは「神の国」を発見し、知り、味わうことができるのだ。
私たちは自分の周りに容易に「向こう岸」を作っている。大人とこども、男性と女性、クリスチャンとそうでない人、教会と外。そうな風に線を引くことでこちら側の自分が安全・安心であるかのようにしている。そんな私たちにイエスさまは、「向こう岸へ渡ろう」と声をかけている。なぜなら、そこにこそ「神の国」があるから。そこにいるだれかと共に生きるときにこそ知りうる「神の国」を見つけに、今日も向こう岸に向かいたい。